完全無欠な自己PR文はなぜ失敗するのか?
完全無欠なPRのリスク
私はこれまで数多くの受講者が書いた自己PR文を見てきましたが、その中には「非の打ち所のない」自己PR文にも何例かお目にかかりました。
「非の打ち所のない」とは、強力な自己PR文という意味ではありません。
自己PR文の中で、自分を完全無欠に描いているという意味です。
ある方は、営業所の責任者として次のように自分をアピールされていました。
- 目先の利益にこだわらずに長期的な視野で取り組んだ
- 部下1人1人の資質を見極めてそれに合った仕事を任せた
- 部下を細かくフォローしたことで離職率は従来の半分以下に減った
- 仕事のリストラに取り組み、ムダな業務を排除して効率化した
- 顧客の新規開拓と既存顧客の維持の両方を強化した
- 売上は常に対前年比20%アップを維持した
絵に描いたような、まさに営業責任者の鏡のような内容ですね。
ところが、現実にはこの自己PR文を書いた方は失業中であり、再就職に非常に苦労されていたのです。
なぜそんなことが起こるのでしょうか?
この自己PR文読んだ採用担当者の頭には、次のような根本的な疑問が浮かぶはずです。
「そんなに優秀なら、どうして(何度も)転職するの?」
「どうしてリストラされたりしたの?」
確かに自己PR文は、あなたの評価を高め、最終的に採用されるためのツールですから、あなたの良さをアピールしなければなりません。
しかし、あまりに自分の良いところだけを並べ立て、完全無欠さが度を越すと、転職活動中・失業中という現状との間にミスマッチが生じてしまうのです。
もちろん、世の中には本当に優秀な方もいて、そのような自己PR文が「看板に偽り無し」である可能性もあります。
でも、もしそれが自分の失敗や弱点を隠すための「完全無欠な自己PR文」だとすれば、いずれ矛盾は露呈してしまうでしょう。
共感との乖離
完全無欠な自己PR文のもう1つの問題は、
「共感が得にくい」
ということでしょう。
「自己PR文の最高のネタは○○の経験の中にある」のページでお話したように、実はむしろ、
「みっともない失敗や挫折」
の経験にこそ、読み手との心理的な距離を縮め、共感を生むカギがあります。
自分の良い所だけを並べ立ててアピールすることは、逆に読み手の心理的な抵抗感を生み、共感とは逆の効果をもたらしてしまう危険があります。
自分の評価を高めようと思うあまりに、自己PR文の目的に逆行してしまっているのですね。
本当に読み手の心を打つ自己PR文を作るには、鎧で本当の自分を覆い隠すのではなく、勇気を持ってさらけ出すことこそが必要だと思います。
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