記憶の仕方でライバルに差をつける
資格試験とは記憶の勝負
「「覚えなきゃ」と思ったら脳は閉じる」では、受験勉強では「覚える」のではなく「理解する」ことが大切だとお話しました。
しかし、どんな資格試験でも、最終的には必要な情報をどれだけ頭に入れることができたか、ということで勝負が決まります。
正確に言えば、限られた時間の中でどれだけ正解を導き出せるかで勝負が決まるわけですが、そもそも事前に必要な情報が頭に入っていない限り、それを使って正解を得ることはできません。
資格試験のカギは「記憶」が握っているのです。
記憶力にある程度の個人差があることは否定できません。
しかし、たとえあなたが自分の記憶力に自信がなかったとしても、記憶のメカニズムを知り、勉強法を工夫することで、成果を大きく改善することも不可能ではないのです。
記憶とは本当に不安定なもの
記憶の過程は、「記銘」「保持」「想起」(そして「忘却」)の段階に分けることができます。
「記銘」とは、情報を記憶のために取り込むこと。
「保持」とは、取り込んだ情報を記憶として保つこと。
「想起」とは、保持していた記憶を外に取り出すこと。
取り込んだ情報の記憶を保ち、試験時に取り出せるようにすることが受験勉強の目的です。
しかし、エビングハウスという心理学者による記憶に関する調査によれば、記銘した情報は、20分後には42%が忘却され、1時間後には56%、1日後には74%が忘却されたということです。
この数字は記憶した情報の種類によって変化しますが、要するに、
「勉強したことは勉強の直後から急速に忘れ始め、1日経てば大半を忘れてしまっている」
ということになります。
このデータを見れば、最初から覚えることを前提にテキストを読み進めることがいかに間違っているかが理解できるでしょう。
記憶を強化する方法は
この忘却曲線に逆らって記憶を強化するための方法は、大まかに言って2つあります。
一つは、効果的な情報の取り入れ方をすること。
効果的な情報の取り入れ方とは、暗記ではなく理解を心がけたり、情報を単純化したりイメージ化したりすることがそれに当たります。
また、音声や映像を使って勉強した場合、テキストに比べて情報が鮮明に伝わりますから記憶に残りやすくなります。参考書での独学よりも予備校の授業のほうが学習効果が高い理由の一つはここにあります。
もう一つは、記銘、想起する回数を増やすことです。
単純に学習回数を重ねることで記憶の定着を図ることができます。
さらに大切なのは、記憶が新しいうちに触れるということです。記憶が劣化しないうちに上書きされることで、無理なく記憶の定着を高めることができるのです。勉強したその日、それもできるだけ早い時間の復習をするのが効果的ということです。
1日経てば勉強したことの4分の3は忘れてしまうわけですから、平日が忙しいから週末にまとめて勉強するというような学習方法は、記憶の仕組みからしてずいぶん非効率だということになります。
忘れることを前提に、理解することで記憶を強化し、「忘れる前にまた触れる」「何回も見直す」ことで定着を図るという勉強法が、難関試験の突破には不可欠なのです。
なお、教育心理学者のP.ラッセル氏の研究によれば、復習は学習後10分後、1日後、1週間後、1カ月後、6カ月後のように、少しずつ間隔を広げながら行うのが効果的だということです。私自身の体験からいっても、大変参考になる説だと思います。
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