資格勉強のコストと代償
資格勉強であなたが支払うもの
それでは、ここで資格を取るために必要なコストというものを一度じっくり検証してみたいと思います。そうすることで、資格を取ることの真実の一面が見えてくると思うからです。
なお、勉強すれば1ヶ月か2ヶ月で取れてしまうような資格であれば、それほど大きなコストにはなりませんので、このページのお話は無視してもらって構いません。
ここでは一般的に「難関資格」と呼ばれるものの1つとして、社会保険労務士を例にとってお話したいと思います。
社会保険労務士試験は3年で合格できる?
社会保険労務士というのは毎年1回実施される国家資格で、受験者数は約5万人、合格率はおよそ8%前後になります。
社労士試験では、合格までの期間が「平均3年」というような数字を目にすることがあります。しかし、この数字には注意が必要です。
社労士試験の合格率は8%前後ですから、当然のことながら合格できるのは10人に1人未満ということになります。
しかし、実は、そもそも受験勉強を始めたものの、途中で挫折して受験まで至らない人が毎年たくさんいるのです。そして、この人たちは合格率の中に現れてきません。
私が通った学校でも、早い人は1、2回の授業で姿を見なくなりました。そして1人、また1人と徐々に人数が減っていき、最終的に残っていたのは3分の2位の人数だったと思います。
数字に表れてくるのは、受験まで勉強を続けることができた人たちだけなのです。
さらに、受験者全員が最終的に合格するかと言えば、決してそんなことはありません。
難関資格の勉強、それも仕事をしながらの勉強は、心身ともに激しく消耗するものです。本気で合格するつもりなしにダラダラ続けている場合は別ですが、本気モードで3年、4年と勉強を続けていれば、精神と肉体のどちらかが参ってくるはずです。
あるいは経済的な面から断念することもあるでしょう。
理由はともあれ、合格を手にすることなく受験レースから抜けていく人もまたたくさんいることは事実であり、これらの人は合格率の分母のみにカウントされながら姿を消していくのです。
つまり、「平均3年」というのは、受験前に挫折することなく、本気モードで勉強を続け、かつ最終的にめでたく合格を果たした人の、合格までの平均年数と考えるべきものでしょう。
決して、「3年も勉強すれば合格できる。」という意味ではないことを肝に銘じる必要があります。
受験勉強のコスト
次に、仮に3年で社会保険労務士試験に合格できた場合のコストを考えてみましょう。
難関資格を受験する場合、ふつうは受験予備校を利用することになるでしょう。学校によってかなり異なりますが、年間の授業料はおよそ20万円~30万円の受講料がかかります。
再受講の場合は授業料も下がりますが、交通費や参考書代などを合わせると、3年だと100万円前後のコストは見積もっておく必要があります。
これだけでもかなりの負担ですね。
しかし、それよりも大きなコストがあります。
それは、あなたの「時間コスト」です。
仮にあなたが年収500万円のサラリーマンだとします。年間の労働時間が2,000時間だとすると、あなたの時給は2,500円です。
言い換えれば、あなたは1時間につき2,500円の付加価値を生み出していることになるのです(実際の付加価値はサラリー以上のはずですが)。
社労士試験で合格までに必要な時間は当然個人差がありますが、どんなに少なくとも500時間、ふつうは1,000時間以上必要と言われます。
あなたが3回目の受験で合格したとすると、3,000時間程度は受験勉強に費やすことになるでしょう。
すると、あなたの受験勉強の時間コストは、金額に換算すると2,500円×3,000時間=750万円 に相当すると言っても過言ではありません。
先ほどの授業料などと合わせると、多い人は1,000万円近いトータルコストをかけることになるわけです。
この金額、びっくりしませんか。
もっと受験が長期化すれば、それ以上のコストがかかることになります。
もちろん時間をコストに換算することが妥当かどうか一概には言えませんが、あなたが同じ時間を本業や本業のための準備に費やしたとしたら、その時間単価よりもっと高いリターンが得られているかもしれません。
(残業代や歩合給や、昇進・昇給など…)
また、それだけの時間を勉強に費やせば、多かれ少なかれ仕事に影響が出ます。それによって本業の成果・評価がダウンしたとすれば、その分だけ受験勉強のコストはさらにかさむことになるのです。
取り返しのつかない代償を払うことにも
ここまでは、無事合格できた場合のお話です。
もし何年か受験勉強に費やした後に合格をあきらめてしまったら、それまでに要したコストは取り戻されることはありません。
いや、お金ならそれからのがんばりで取り戻せるかもしれませんが、受験勉強に費やした貴重な時間は、二度と戻らないのです。
貴重なお金と時間を失った後に残されるのは、深い挫折感です。
ムダにした貴重なお金と時間の大きさ、そして合格をあきらめた自分のふがいなさを、その後も引きずることになるのです。
ひょっとしたら、これが受験勉強に対して支払ういちばん大きなコストなのかもしれません。
ですから、難易度の高い資格ほど受験すべきかどうかを真剣に検討しなければなりませんし、自分にGOサインを出したら、あとは全力でやるしかないのです。
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