「覚えなきゃ」と思ったら脳は閉じる
「覚える」のではなく「理解する」
恥ずかしながら私の大学時代は学生とは名ばかりの生活で、試験対策はいつも一夜漬け同然でした。
どこからか手に入れた(笑)分厚いノートのコピーの束を短時間で頭に詰め込む作業は、苦痛以外の何ものでもありませんでした。そして、試験が終わった瞬間、詰め込んだ知識は見事なほど消え去ったものです。
これは極端な例として、あなたも資格試験の分厚いテキストを前にしたとき、「受験までにこんなに覚えないといけないのか~」という暗い気持ちになるかもしれません。
でも、「覚えなきゃいけない」と思った瞬間、脳はシャッターを閉じてしまいます。
人は情報を暗記の対象ととらえた瞬間に、頭の奥深くにその情報を取り入れることができなくなってしまうのです。そして、その情報はすぐに消えてしまいます。
簡単な試験ならともかく、難関試験の勉強で忘れてはならないのは、「覚える」のではなく「理解する」という意識です。
単純暗記は楽なようで、頭に入る情報量は限られていて、なおかつ記憶は持続しません。
逆に、理解さえしていれば、そのときは忘れてしまっても、次に学習したときにすぐに記憶は蘇りますし、回数を繰り返すうちには確実な知識になってくれるのです。
忘れることを怖れる必要はまったくありません。理解さえしていれば、時間が、回数がカバーしてくれます。
「覚えなくていい」そう思えば、精神的にも楽に取り組めるはずです。
情報はまず単純化せよ
あなたが初めて資格試験の勉強に臨むとき、最初からテキストの内容をそのまま逐一頭に入れていこうとすると失敗します。
社会保険労務士試験を例に挙げさせてもらうと、たとえば、予備知識のない人が労働基準法のテキストを開いて、
「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。ただし、……」
という「解雇制限」の条文を最初から一字一句押さえようとしても始まりません。
難しい言葉や概念をマスターするためには、まず、「要するに、~ってことだな」というふうに、自分なりに単純化して言い換えてみることです。上の例で言えば、
「解雇制限というのは、仕事でケガや病気をした人や、赤ちゃんのいる女性が対象なんだ」
「そういう人は新しい仕事を見つけるのが大変だから、簡単にクビにならないよう保護されているんだな」
といった具合です。
多少不正確になったとしても構いません。単純化することで内容は明確になり、記憶に定着しやすくなります。
本質的なことがわかっていれば、付随する細かな情報もマスターしやすくなります。あとは勉強を重ねていく中で、必要な情報を追加していけばいいのです。
逆に、最初から一字一句厳密に覚えようとすると、かえって本質的な理解ができず、その結果なかなか記憶にも定着しないものです。
どんなにがんばって勉強していても、「○○って要するにどういうこと?」と人に聞かれて返答に困るようでは、本当にマスターしているとはいえません。
「単純化」→「精緻化」
この順番をけっして間違えないように!
情報をイメージ化せよ
これも社会保険労務士試験の例で見てみましょう。
たとえば、労働基準法では「休憩を一斉に与えなくてもいい業種」として、「運輸交通業、商業、金融・広告業、映画・演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業」が定められています。
頭の柔らかい若い年代の人なら、これらもまとめて覚えてしまえるかもしれませんが、テキスト情報を単純暗記する力は、残念ながら年々衰えていきます(涙)。
しかし、左脳だけでなく、右脳を併せて使うことで、記憶の定着を高めることができます。特に覚えづらい部分については、その内容を一度頭の中で具体的にイメージしてみることが効果的です。
上記の「休憩を一斉に与えなくてもいい業種」とは、要するに仕事が継続的に行われる必要があって一斉に休むとマズかったり、定型的な事務ワークでなく一斉休憩にそぐわなかったりする業種です。
ですから、それぞれの業種の人がせわしなく働き続けるようなイメージを思い浮かべてみるといいでしょう。厳密にイメージするのではなく、面白おかしくデフォルメしてイメージするのが効果的です。
「運輸交通業」なら、眠い目をこすりながら徹夜で走り続けるトラックの運転手とか(アブナイ(笑))。「金融・広告業」なら、一日中ギラギラした目でお金を数え続けるおじさんの姿だったり(失礼!)。
最初は少し面倒ですが、一度実行すれば確実に記憶は強化されますので、記憶力に不安がある人ほどお勧めの方法です。
このように列挙された項目を覚える方法としては、頭文字などを使ったゴロ合わせを使うという手もあります。ゴロ合わせも、うまく作れば意味を持った文章としてイメージ化できるので、記憶が定着しやすくなります。
こうした記憶の定着法も、邪道と思わずに活用してみましょう。
効果が出る方法こそが最良の学習方法なのですから。
よく読まれる関連ページ
- 受験と切っても切れない関係:和多田と資格(その1)
- 受験と切っても切れない関係:和多田と資格(その2)
- 資格の定義と種類について
- あなたが資格を目指す目的は?
- 資格・免許で最も稼いでいる人は誰か
- 資格と実務経験との関係
- 資格学習が現実逃避になっていないか
- 資格勉強のコストと代償
- どんな資格でも必ず一発合格を目指す
- 難関資格でも会社は絶対辞めないこと
- 受験勉強では「投資」を惜しまない
- 資格の学習手段は通学と通信のどちらを選ぶ?
- 完璧主義は資格取得の敵:いい加減なくらいがちょうど良い!
- 資格受験は学習初期が最大の難関
- 凡人が集中力を発揮する方法
- 16倍の効率で学習する方法とは
- 教材は勇気を持って絞り込むべし
- 記憶の仕方でライバルに差をつける
- 睡眠の取り方でライバルに差をつける