Vol.3 転職コンサルタントのジレンマ
転職コンサルタントのお客さんは、言うまでもなく受講料を支払ってくれた転職希望者。
その方が希望の転職を果たせるように全力で支援するのが仕事だ。
しかし、時々ふと疑問を感じることがある。
受講者は、基本的にさまざまな理由で独力では転職がうまくいかない方々だ。
年齢。経験不足。実績不足。長いブランク。転職回数の多さ。一貫性のない職歴。
文章力の不足。口下手…
厳しい言い方をすれば、そのままでは企業に欲しいと思われない人材である。
それを、手を変え品を変え、角度や切り口を変え、評価が高まるよう、採用の可能性が高まるよう、いろいろな対策をアドバイスしていく。
そこでふと感じる疑問とは、
「企業が本来は採らなかったはずの人材を、転職ノウハウを活用して採用させることは、社会の利益に反しているのではないだろうか?」
というものだ。
同じ企業に応募し、落選したライバルの中には、受講者よりもっとその企業にふさわしく、もっと貢献できた人材がいたかもしれないのだ。
私の仕事は、企業が本来採るべき人材を採る邪魔をしていることになるのかもしれない。
しかし、である。
受講者の多くは、さまざまな理由で、転職市場において正当な評価を得られないでいることもまた事実である。
ターゲット業界・企業の選択ミス。応募方法の間違い。自分の良さをわかっていない。アピールの技術が不足している。倒産等の不運に見舞われてきた…
本当は優れた資質を持ち、企業に貢献できる能力を持っているにも関わらず、そのことを企業にうまく伝えることができずに働き場所を得られないでいるのは、社会の損失である。
したがって、そんな彼らが職場を得るための支援を行うことは、社会の利益にかなうことになるはずだ。
いやちょっと待て。
私が行なっている転職支援は、営利を目的とするビジネスなのだ。
そこで社会貢献だとか社会の利益だとかを論じるのが、そもそもの間違いなのかもしれない。
大切なのは顧客のために働き、自らの利益を得ることではないか。
思いは巡り、今日も割り切れないジレンマを抱えながら仕事に取り組む。
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