Vol.20 この世が午後しかなかったら
私は、朝が弱い。
40代後半の年齢になったが、人間ドックで測った朝の血圧は上が「100」。
ほとんど低血圧である。
サラリーマンではないので朝寝坊できるかと言えばそうではなく、事情によって6時半前後には起きなければならない。
(「それでも十分朝寝坊だ」というご意見もあるだろうが)
目覚まし時計のスヌーズを数回繰り返した後、ようやく朝がやってきたことを自覚する。
60キロ少々の細身なのに体は鉛のように重く、ベッドに沈み込むかのようだ。
「あと1時間眠る権利」を買うことができるなら、意識が朦朧としているこの時なら、1万円くらい払ってしまうかもしれない。
重い体を引きずるようにしながら寝室から出て、必死に1階に降りる。
なぜなら、私には朝食を作るという重要任務が課せられているからだ。
眠けマナコで包丁を握り、フライパンを振り、盛り付ける。
その間、ほぼ意識がなく、体が覚えている作業をこなすのみである。
残念ながら、せっかく作った朝食の味もよくわからないままだ。
(味わうほどの料理ではないことも事実だ)
そういえば一時期、何を血迷ったか、「毎朝4時に起きる健康法」というものを知り、チャレンジしたことがあった。
しかし、なぜか寝る時間が早くなるだけで、起きる時間は一向に早くならなかったため、チャレンジは失敗に終わった。
午前中の仕事は、正直に言うと「半身(はんみ)の状態」で行っている。
実力の50%しか出していない状態だ。
当然、午前中にもミーティングが入る日があるが、できれば午後をお勧めしたいというのが偽らざる本音だ。
(実際にはキチンとがんばってやってます…)
午後になり、血圧も体温も上がり、頭も体も回転し始める。
(爬虫類か)
午前中の体たらくっぷりがウソのように口も手も滑らかに動き、仕事がスイスイとはかどる。
「オレってすごいじゃん」と思える瞬間だ。
午前中とはまるで別人である。
そんな時、いつも空想してしまう。
『もし世の中に午前中というものが存在せず、午後しかなかったとしたら…』
やっぱりその半分は使い物にならないだろう。
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