Vol.27 資格で別世界へ?
先日、まったく属性の違う2人から、まったく同じ趣旨の相談を受けた。
かたや50代半ばの男性。
かたや30歳過ぎの女性。
相談の趣旨は、
「今までの仕事はもうコリゴリだ」
「社会保険労務士の資格を取って転職をしたい」
というものだ。
2人の今までの仕事もまったく異なるものだが、よくここまで相談内容が合致するものだと感心した。
ただ、実際のところ、このように資格でも取ってまったく違う仕事に転職したいという相談は2人に限ったことではなく、むしろ非常に多い。
以前に比べて労働条件が過酷になっていることも、その背景にあるように思う。
「隣の芝生が青く見える」
のだ。
しかし、こうした転職がうまくいくことはほとんどないと言っていい。
まず、転職に役立つと言われるような資格なら、それなりの難易度があるものであり、それを取得すること自体に挫折する可能性が高い。
そもそも目の前の現実からの逃避が第一の動機であるから、その資格を何が何でも手に入れるんだという気持ちが希薄であり、ちょっとしたことで合格を断念してしまう。
しかし、本気で粘り強く勉強を続け、めでたく合格を果たしたとしても、そこにはまだ大きな問題が待ち受けている。
多くの場合、資格だけあって実務経験が全くない人は、企業から高い評価を得ることが難しいのだ。
(一部の例外はあるが…)
逆に、資格など無くても、その分野で十分な実務経験を持っていれば、即戦力として評価されて採用される可能性が高い。
実務経験こそが、企業が求める「実務能力」の最大の裏付けだからだ。
どんな求人も、そこに応募してくる人の多くがその道の経験者である。
その豊富な経験者たちを差し置いて、未経験者が採用されることがどれだけ難しいことか、想像に難くない。
何年も受験勉強に苦労した挙句に、せっかく取った資格が活かされないとしたら、それほど悲しいことはない。
いきなり受験勉強に着手する前に、
「本当にその資格を取って転職することが可能なのか」
「本当にそのキャリアチェンジが自分には必要なのか」
とことん検討されることを勧める。
資格は、けっして「別世界へのパスポート」ではないのだ。
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