退職願はいつどのように出すべきか
一度出したら撤回はできない
「退職願」と「退職届」の違いについては「退職願を書くときの留意事項」でお話しましたが、「退職願」であっても、一度提出したら撤回はできないものと考えた方が良いでしょう。
もちろん、会社から強く慰留される人もいるでしょうが、自分の都合で退職そのものを取り消したり、あるいは記載した退職日を変更するなどは基本的に不可能と考えるべきです。
仮に退職の撤回を聞き入れてもらえたとしても、その後の社内での立場が苦しくなることは言うまでもないでしょう。
だからこそ、退職願をいつ提出するかについては、極めて慎重に判断する必要があります。
提出のタイミングを間違えない
在職中に内定を獲得してから退職する場合、考慮しなければならないリスクは、「内定の取り消し」です。
退職願を提出した後で万一何らかの事情で内定が取り消された場合、会社に戻ることもできずに無職になってしまうことになります。
ですから、必ず内定が確実になってから退職願を提出しなければなりません。
「雇用通知書」などの書面が届かない口約束の段階で退職願を提出するのはもっての外ですが、入社前に転職先の健康診断が行われる場合は、その結果が問題ないことを確認してからにするべきです。
そこで重大な問題が見つかった場合は、それを理由に内定が取り消しとなる可能性があるからです。
健康の問題だけでなく、内定が取り消しになるような問題行動を起こさないことも言うまでもありません。
また、退職のタイミングでボーナスの受給や失業保険の受給などに影響が出る可能性があります。
「あと1ヶ月後にしておけば良かった…」
などということも絶対に避けたいですね。
退職願は誰に出す?
退職願に記載する宛名は、原則として社長名とします。
しかし、それを実際に提出する相手は、通常は直属の上司となります。
(就業規則に定めがある場合もありますのでご確認下さい)
上の役職者に出した方が話が早いなどと考えて、もし直属の上司を飛び越えてさらにその上司に提出したらどうなるでしょうか。
自分を飛ばされた上司は心良く思わないでしょうし、退職の原因はその上司と問題があったからではと第三者から勘ぐられる可能性もあります。
退職までには何かと直属の上司と関わることになるわけですから、不要なあつれきは避け、手順はルールに沿って進めましょう。
(退職の原因が本当にその上司にあったのなら、上司を飛ばして届け出ることで意図的なメッセージを発することもできるかもしれませんが…)
退職の拒絶や慰留を受けた場合
退職願を提出した後の上司の対応は様々ですが、人手不足であったり、あるいは上司の評価にキズがつくような場合、拒絶やしつこい慰留を受けることもあるでしょう。
(逆に、「ああそうですか、ご自由に」と言われるようでは、職業人として寂しいですが…)
しかし、たとえ「退職は認めない」と言ってきたとしても、法的には「職業選択の自由」「退職の自由」が認められているため、その主張には何ら法的根拠はありません。
さらには、「退職を認めない」ことは労基法で禁じられている「強制労働」に該当しかねない話で、あなたの退職意志が上司や会社の都合で妨げられることは原則としてあり得ません。
あなたには「退職する権利」があるのです。
ただ、法的な話は別として、あなたの対応次第で退職がスムーズに進むのであれば、それに越したことはありません。
会社と揉めて得をすることはないのですから、できるだけ「うまく立ち回る」ことが大切です。
相手は脅し、泣き落とし、あるいはおいしいエサをちらつかせる等、いろんな手に出てくる可能性があります。
大切なのは、上司が退職を慰留する事情や背景を考えることです。
それが上司のメンツや責任に起因するものであれば、真っ向から対立するのではなく、
「可能な範囲で相手の顔を立てる」「上司が退職の原因ではないことを明確にする」
等の配慮によって前進できる可能性があります。
そうした配慮によってもどうしても上司が退職願を受理してくれない場合は、人事部門に話を持っていくことも検討することになります。
上司の退職拒絶や慰留によって転職先の入社日に影響が出ることだけは避けなければならないからです。