仕事の引き継ぎはなぜ大切なのか
仕事の引き継ぎは誰のために行うのか
転職が決まれば、気持ちが今の会社のことよりも次の会社に向かうのも当然のこと。
転職に伴う様々な手続きや準備で忙しくなりますし、残った有給休暇を使って骨休みもしたい。
となると、今の会社の仕事の引き継ぎは、どうしても優先順位が低くなります。
「辞めた後の会社のことなんか知ったこっちゃない」
「今さら会社のためにがんばって何のメリットもない」
そう思う人もいるかもしれません。
でも、私はそこで手を抜かずにしっかり「最後の勤めを果たす」かどうかが、新天地で成功できるかどうかの分かれ目だと思っています。
実際、私は自分が会社をやめる時、担当業務のすべてについて業務マニュアルを作成し、それを読めば後任の担当者が1人で業務を行えるようにしました。
引き継ぎを手を抜かずに行うべきなのは、決して会社のためや後任のためだけでなく、結局は自分のためになるからです。
私がそう考える理由をお話しましょう。
引き継ぎをしっかり行うべき理由
退職を円滑に行うため
自己都合の退職は、多かれ少なかれ上司や同僚に仕事上の迷惑をかけるものです。
そこには精神的なやっかみや反発などが生じることもあります。
そんな時にあなたが「得にならない」引き継ぎ業務を熱心に行う様子を見せれば、周囲のあなたへのネガティブな気持ちは緩和され、さらにはあなたの退職を祝福したり退職を惜しむ気持ちにもつながります。
そうすれば、退職手続きや有給休暇の取得など、様々なシーンで便宜を図ってくれるかもしれないのです。
転職先からの信頼を損ねないため
理想的な転職の条件の1つは過去の経験やスキルが活かせることであり、転職先が今の会社と同じ業界というのは珍しいことではありません。
狭い業界なら、悪いうわさはすぐに伝わります。
前の会社と関係がなくても、退職間際のごたごたで入社日がずれ込んだり、入社後に前の会社から引き継ぎ業務について頻繁に問い合わせが入ったりすれば…
新しい会社から「しっかりけじめをつけられない人間」と見られかねません。
飛ぶ鳥跡を濁せば、思わぬしっぺ返しを食らうこともあるのです。
社外人脈という財産のため
あなたがどんなに優秀な人材でも、転職先では「外様」になります。
仕事で結果を出すためには、純粋な業務スキル以外にも社内の事情に通じていたり人脈を持っていることなども大きく影響しますが、その点では長い社歴を持つ「生え抜き」社員にはかないません。
しかし逆に、あなたが前の会社で築いた人脈は、新しい会社の生え抜き社員にはない財産であり強みになり得ます。
とはいえ、それも前の会社の人脈と良好な関係が保てていればこそです。
いつどこで過去の人脈が活きるかわかりませんから、あなたはできるだけのことをしてから羽ばたくべきなのです。
業務スキルの体系化・向上のため
あなたが引き継ぎを行うのは、当たり前ですがあなたが担当していた業務です。
多くの場合、転職先でもそれと同様の業務に従事する可能性があるはずです。
あなたが引き継ぎのために業務の内容をわかりやすく整理することは、自分の中でも体系化されていなかった業務ノウハウを改めて体系化し、業務スキルを向上させることにつながるのです。
それは次の会社の仕事にもきっと役立ちますし、仮に転職で仕事の内容が変わったとしても、いつかどこかで有形無形にそのスキルが役に立つ機会があるでしょう。
経済的なメリットも
実は、退職前にがんばって引き継ぎを行うことが、経済的なメリットにつながる可能性もあります。
1つは、残業代です。
通常業務に加えて引き継ぎ業務をがんばることで、労働時間が長くなり、残業代という形で報われます。
もう1つは、失業保険です。
失業保険の受給額は、退職前6ヶ月間にもらった給料の額をベースに計算されますので、残業代がかさめばその分失業保険が多くもらえることになります。
ただし、残業代が出ない方や、元々給料が高くて失業保険の上限額に達している人はメリットを受けることができませんが…
最後は、気持ちの問題
以上、引き継ぎをしっかり行うことのメリットについてお話してきました。
それらに加えて、やっぱり最後は「気持ち」の問題かなと思います。
私個人について言えば、サラリーマンを辞めてまったく関係のない仕事に就いたので、実際には上記のメリットのほとんどを享受していません(失業保険ももらってません)。
それでも、しっかり引き継ぎをして良かったと今でも思っています。
やっぱり、揉めたり気まずい思いをしながら辞めるよりも、気持よく、かつ惜しまれながら辞めたいと思いました。
それに、新しい職場で良い仕事をするためには、前の職場をすっきりした気持ちで辞めることがすごく大切なことだと思うのです。
引き継ぎをしっかり行うことは、次の仕事へのエネルギーにもなるのです。