もし内定を取り消されてしまったら
内定取り消しの悪夢
転職活動は、内定獲得を目標に行うものであり、それが1つのゴールと言えます。
しかし、ゴールのはずの内定通知を受けた後で、内定を取り消されてスタート地点に戻されるケースがあります。
実際に私が支援を行った受講者が内定を取り消された痛い経験もあります。
あなたにはそんな目には遭ってほしくないですが、それが現実となってしまった時の対応についてお話したいと思います。
内定取り消しのタイミング
内定の定義については、「内定の定義を知っておく」を確認して下さい。
実は会社側から内定の意思表示があったとしても、その時点では正式には内定は成立していないと言えます。
会社から内定通知を受けた後で、あなたが内定を承諾した時に、初めて本当の意味で内定が成立します。
私は内定の通知を受けたら、正式な返事の前に若干の猶予をもらい、その間に様々な検討や交渉を行うことを勧めています。
しかし、場合によっては猶予期間の申し出に対して、あるいはもらった猶予期間中に、内定を取り消されることがあります。
たとえば、「採用を急いでいるから」「即応じてくれる人が他にいるから」といった理由です。
「いったん内定をくれたのに、わずか数日のことで取り消すなんて」
と思っても当然ですが、まだ内定は厳密には成立していないので、その間に取り消されても文句は言えないとも言えます。
しかし、内定を受諾し、内定が成立した後なら話は別です。
内定成立は、同時に雇用契約が成立したことを意味するので、その後の「内定取り消し」は「解雇」に相当し、難しい表現を使えば、「客観的に合理的な理由があることや社会通念上の相当性がなければ」認められないからです。
あなた側によほどの問題がない限り内定の取り消しは許されませんから、採用側の非を追及することが可能です。
口頭か文書か
ただし、内定通知・受諾のやり取りが証拠の残る方法で行われているかどうかは、取り消しへの対応においては非常に重要です。
内定は口頭でのやり取りでも法的には成立します。
しかし、実際に採用側の責任を追及する際には、内定成立の事実の客観的な証拠がなければ難しくなります。
ですから、内定通知・受諾のやりとりは、電話だけでなく書面かもしくはメールなどをできるだけ介するようにしたいところです。
内定取り消しへの対応
内定成立後の取り消しをされた場合、あなたが採り得る道は3つあります。
- 泣き寝入りをして諦める
- 内定の取り消しを取り消すよう求める
- 採用は諦めて慰謝料の支払いを求める
1.泣き寝入りをして諦める
もし他にも内定企業や選考中の企業があったり、その企業にどうしても入りたいというのでなければ、腹立たしくはありますが、諦めるのも1つの選択です。
不誠実な企業に関わって時間や労力を浪費するよりも、他社への転職活動に向かう方が生産的とも言えます。
(ただし、今後の再発を防ぐためにハローワーク等関係機関に事実を報告されることをお勧めします)
2.内定の取り消しを取り消すよう求める
あなたにとってその会社がどうしても入りたい会社であれば、「取り消しの取り消し」を求めたいと思うでしょう。
もちろん法的に争うことも可能です。しかし、内定成立後にそれを取り消すような会社は、本当に良い会社なのでしょうか。
また、もしあなたの主張が通って入社がかなったとして、入社後に気持よく働くことができるのでしょうか。そのあたりを検討する必要があるでしょう。
3.採用は諦めて慰謝料の支払いを求める
第三の選択肢は、その会社への入社は諦め、慰謝料や迷惑料として一定の金銭を求めるものです。
内定成立後の取り消しの証拠があれば、応じる可能性は十分にあります。
被った被害を金銭で精算できれば、他の会社で気分一新がんばることができるでしょう。
労働トラブルの解決方法
企業と直接交渉をしてもうまくいかない場合は、公的機関による解決が考えられます。
- 労働基準監督署からの指導や是正勧告
- 都道府県労働局等によるあっせん
- 裁判所を利用した訴訟手続
ただし、指導やあっせんには法的な拘束力がないため、実効性という意味では有効とは言えません。
また、訴訟は非常に時間や費用がかかるのが難点であり、その挙句に望むような判決が出ない可能性もあり、その際の時間的・金銭的な損失は大きなものがあります。
こうした上記の解決手段のデメリットを解消し、労働トラブルを,迅速・適正・柔軟に解決するために「労働審判制度」というものが新たに設けられていますので、活用を検討してみてください。
「労働審判制度」
いずれにしても、悪質な内定取り消しに対しては、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。