危ない会社を見極める
危ない企業の「サイン」を知る
正直に言って、問題企業を入社前に確実に見極めることはとても難しいです。
しかし、注意すべき兆候にどんなものがあるのかを知っておくことで、リスクを回避する可能性を高めることはできます。
下記に該当すると思われる場合は、慎重に判断をして下さい。
(ただし、下記に該当するからといって、すべての企業に問題があるわけではありませんので注意して下さい)
1.求人がイメージ広告になっている
求人広告の中で、むやみに「夢」「感動」「挑戦」など、イメージに訴えている企業は要注意と言えます。
「夢」「感動」「挑戦」の根拠が明示されていれば別ですが、詳しい仕事の内容や実態を書くと差し障りがある場合に、そうした耳触りの良い言葉を連呼しがちだからです。
2.すぐに内定を出す
内定をもらえるのは嬉しいことですし、何回も面接をせずに早く内定をくれれば楽で助かります。
でも、内定が早すぎるのも考えものです。
確かに、あなたへの評価が著しく高くて、他社に逃げられないように早々に内定を出す、というケースもあります。
しかし、それほど熱心に面接している様子もない、どこを評価されたのかもよくわからない、という状況で一発内定が出たようなケースは、会社を少々疑ってみる必要があります。
人の出入りが激しいため、とりあえず人数を確保して、使えなければまた採用すればよい、といったスタンスの会社である可能性があるからです。
3.内定受諾の返事をむやみに急がせる
企業の中には、内定通知を行なった際に、「今日中に入社の意思を知らせてほしい」のように、むやみに返事を急ぐところがあります。
中途採用は多くが即戦力として採用しますし、欠員があって一日も早く人員を補充したい場合もあります。
しかし、あまりに返事を急かせる会社には注意が必要です。
じっくり検討する時間を与えたくない理由があるのかもしれません。
自社に自信がある企業であれば、内定者が納得して入社できるだけの時間的余裕を与えるはずです。
4.労働条件を書面でくれない
「チェックすべき雇用条件」でお話したように、労働基準法は、労働者の雇入れに際して労働条件を書面により明示すべきことを使用者に義務づけています。
入社後に「話が違う」ことがわかっても、証拠がなければ結果的に労働者が泣くことになるからです。
しかし、企業の中には、
「ウチではそういうものは渡していない」
「すべて詳しく説明したはず」
などと言って、書面での交付に応じてくれないところがあります。
「書面を要求することで内定を取り消されたらどうしよう」
と悩む人もいますが、それを理由に内定を取り消すような企業は、入社すべきではないと私は思います。
5.雇用形態があいまい
正社員として募集されているのに、よく話を聞いてみるとあいまいなケースがあります。
たとえば、「入社後1年は契約社員」「入社後半年は準社員」などと言って、非正規社員としてスタートさせるような場合です。
採用側にとっては、まだ仕事ぶりがわからない人間をいきなり正社員として雇うのはリスクがあるということもわかります。
しかし、中には労働者を都合よく使うための方便としているところもあるので要注意です。
たとえば、安い賃金で存分に働かせたあげく契約満了時に即辞めさせたり、逆に「その仕事ぶりでは正社員にはできない」といつまでも非正規社員として雇い続けたり、といったケースです。
「トライアル雇用」や「紹介予定派遣」なども、それ自体は違法ではありませんが、中には当初から正規雇用のつもりがないケースもあるようなので注意が必要です。
労働時間と賃金の関係があいまいなケース
上記に加えて、問題のある企業では、人件費を抑えるために労働時間と賃金の関係がわかりにくい賃金制度を採用することが少なくありません。
たとえば、「定額残業制度」「固定残業制度」と呼ばれるものがあります。
「基本給30万円(ただし、40時間分の残業代を含む)」のような求人を見たことがありませんか?
「基本給30万円」という金額を見て「まずまず」と思うかもしれませんが、この金額は残業代込みなので、本当の意味での「基本給」ではありません。
便宜上この会社の月の所定労働時間を150時間だとすると、それ以外に40時間の残業をした結果の賃金が30万円ですから、時間単価は30万円÷150時間=2,000円/時間、ではなく、30万円÷(150時間+40時間×1.25)=1,500円となります。
したがって、本当の意味の「基本給」は1,500円×150時間=22万5,000円、残業代が1,500円×1.25×40時間=7万5,000円ということになります。
さらに問題なのは、このように定額残業制度を採るような会社では、残業が40時間を超えた場合でも「残業代は含まれているから」として追加の残業代を支払わないことがある、ということです。
年俸制や裁量労働制
労働時間と賃金の関係があいまいになりやすいその他の制度に、「年俸制」や「裁量労働制」などがあります。
仮に「年俸500万円」として契約したとして、年俸制だからいくら働いても500万円の賃金で良い、というわけではありません。
年俸制であっても、所定の労働時間を超えた場合にはやはり割り増しの残業代を支払う義務があります。
また「裁量労働制」は、裁量度が高い職務を行う労働者は、自由に働き方を決めることができるため、使用者が労働時間管理をすることになじまないとして「一定時間働いたものとみなす」というものです。
しかし、本来の趣旨を逸脱して、本当は職務を行う上での裁量がないのに、ただ「残業代を支払わない」目的のために、この制度を導入する企業が後を絶たないと言われています。
ですので、「年俸制」や「裁量労働制」に基づく採用である場合は、趣旨に沿った運用がされており、残業代を支払わないことを目的とするものでないか、注意が必要です。
以上、危ない企業かどうかを判断するためのポイントの例についてお話しました。
ここでは、注意を喚起するために「性悪説」でお話ししましたが、上記のポイントに該当している企業がすべて問題のある企業というわけではないことを重ねて申し上げておきます。
最終的にはご自分の目と耳でしっかり確かめて判断して下さい。