会社選びの判断基準:労働条件編
労働条件による判断基準
「給料がいくらか」というお金の問題が重要なことは言うまでもありませんが、そのために「どのくらい働かないといけないのか」ということも、それに負けないくらい重要です。
というのは、近年は人件費削減のために人員を大きく減らし、1人あたりの労働負担が増している企業が多いからです。
私のコンサルティングの受講者の中にも、過酷な労働条件で体を壊した経験のある方がかなりいます。
また、複数の内定が得られた受講者が、給料が高い企業ではなく、あえて労働時間の短い企業を選んだケースもあります。
「ワーク・ライフ・バランス」の重要性が叫ばれる中、労働に対する価値観も変わりつつあります。
せっかく入社をしても、長期的に安定して働き続けられない職場では意味がありません。
内定企業の労働条件が、あなたが望む「ワーク・ライフ・バランス」に沿うものなのか、しっかり確認しましょう。
労働条件を比較する上で、一番ベースとなるのは、働く「時間」と「日」です。
ここでは、この2つの観点からの考え方や基礎知識についてお話しましょう。
働く「時間」
あなたが毎日何時に仕事を始め、何時に仕事を終えるのか。
労働条件の一番の基本ですね。
会社が定める始業時刻と就業時刻はそれぞれです。
始業時刻が同じ9:00でも、終業時刻は18:00の会社があれば、17:00や17:30の会社もあります。
(労働基準法では1日の労働時間は8時間までとされているので、この場合終業時刻が18:00より後になることは原則としてありません)
この時点で、1日の労働時間が30分や1時間も違ってくるわけですね。
しかし、当然始業時刻から終業時刻まで働けば済むというものではなく、ほとんどの会社では「残業」が付き物であり、「ワーク・ライフ・バランス」を考える上では、この残業の多少の方が影響が大きいと言えます。
会社によっては残業がほとんどないところもあれば、「午前様」が当たり前、なんて会社まで様々ですし、朝も始業時刻の1時間前の出社を義務付けるような会社もあります。
就業規則上の労働時間だけでなく、こうした「実態」を把握していなければ、本当の労働条件の比較にはなりません。
(残業代をきちんと支払ってくれるかどうかも、大きな問題ですが…)
変則的な労働時間
会社によっては、9:00~18:00のように固定されないケースもあります。
たとえば、「フレックスタイム制」があります。
これは、始業時刻や終業時刻を労働者が自主的に決めて働くことができる制度です。
私がサラリーマン時代に働いていた会社にもありましたが、たとえば、
「11:00~15:00までは必ず働いて下さい(コアタイム)。でも、出社、退社は毎日自由な時間で構いません。ただし、1ヶ月の総労働時間は所定の時間を超えるように。」
といった感じです。その日の都合や体調などによって自由に時間を調整できるので、非常に働きやすい制度と言えます。
朝が苦手な私にとっても、大変ありがたい制度でした(苦笑)。
その一方で、労働時間が変動する制度には「シフト制」もありますね。
常時人員を配置しておく必要がある業態(病院、工場、24時間営業の店舗など)で採られるもので、たとえば1日を8時間ずつ3つの時間帯に分け、一定期間ごとに各時間帯をローテーションさせる「三組三交代制」などがあります。
その場合、「昼勤」もあれば「夜勤」「前夜勤」もあり、生活のサイクルが不規則になりますから、同じ「8時間労働」だとしても、労働時間が固定されている仕事よりも肉体的にキツイと言えます。
あなたの内定企業の「労働時間」がどのようになっているのか、しっかり確認しておきましょう。
休める「日」
次に、休日について見てみましょう。
私はコンサルティングの受講者には最初に必ずアンケートをお願いしていますが、その中に「転職先に希望する休日条件」の項目があります。
そこでは、ほとんどの受講者が、「完全週休2日」を希望します。
ワーク・ライフ・バランスを考える上で、「どれだけ休みが取れるか」というのは、非常に重要な問題です。
また、同じ年収でも、年間休日が90日しかない人と120日ある人とでは、時間単価も生活の余裕も大きく違いますよね。
厚生労働省発表の「平成24年就労条件総合調査結果の概況」によれば、 「1企業平均年間休日総数」は「106.9日」となっています。
(「120日以上」の企業が25.9%ある一方で、「100日未満」が21.1%、「69日以下」の企業も2.6%あります…)
休日の多さは企業規模に比例しますし、同じような企業規模でも業界によってかなり違いますので、注意が必要です。
「週休2日」の意味
なお、企業の休日を理解する上で、「完全週休2日制」と「週休2日制」の違いは抑えておく必要があります。
言葉は似ていて紛らわしいですが、両者は大きく違いますので注意しましょう。
「完全週休2日制」は、文字通り「毎週必ず2日間の休みがある」制度です。ただし、土日でなくても構わないので、明記されていない場合は確認が必要です。
一方「週休2日制」は毎週2日休みがあるわけではなく、「1ヶ月の間に週2日の休みがある週が1度以上ある」制度です。したがって、1週だけ2日休みがあり、残りの週は1日だけ、ということもあり得るということです。
なお、労働基準法では「毎週少なくとも1回」の休日を与えればよいとされています。その休みを与えていれば「祝日」を休みにする必要はなく、祝日の扱いは企業によって異なります。
1年は52週ですから、「完全週休2日制」だと104日。
祝日が15日(2016年から16日)ありますから、計119日。
週の休みと祝日が重なることがありますが、年末年始や夏季休暇などが加わると、休日の多い企業では120日を超える休みになる計算になります。
有給休暇
忘れてはならないのが、「有給休暇」の存在です。
所定の休日に加えて、給料をもらいながら休むことができるありがたい存在で、勤続年数等によって最大年間20日が与えられます。
しかし、問題は実際にどれくらい有給休暇を取れるのか、ということです。
上述の「平成24年就労条件総合調査結果の概況」によれば、全体の取得率は「49.3%」となっており、半分近い日数の有給休暇を取得できていることになります。
しかし、取得状況は個々の業界・企業で大きく違うことは周知の通りです。
会社によっては、「未消化で繰り越されて(翌年まで繰越可能)消えていくだけ…」というところもあります。