退職が先か転職活動が先か:その順番を間違えると致命的
退職が先か転職活動が先か、それが問題だ
在職者の方から頂く質問の代表格が、
「退職してから転職活動すべきか(してよいか)?」
というものです。
その質問の意図は、ほぼ次のどちらかに該当します。
- 1)何らかの事情ですぐにでも今の職場を離れたい
- 2)退職をして時間を作り、転職活動に専念したい
いずれにせよ、その気持ちはわからなくもありません。
しかし、私は常に次のように回答します。
「できる限り在職のままで転職活動をして下さい」
なぜなら、転職活動のために退職する必要はありませんし、逆に退職を先にすることで、いくつもの重大な問題が生じるからです。
転職の見通しが立たない時代
様々な問題が生じる大元の原因は、今の転職環境では、すぐに転職が決まる保証はないということです。
「正しい方法で」「集中して取り組む」ことができれば、準備作業から始めても多くの方が2~3ヶ月程度で転職できることは、コンサルティングの受講者が証明しています。
しかし、それでも中には何らかの事情でなかなか結果が出ないケースもあります。
まして、まったくの独力かそれに近い形で転職活動される方の場合は、どれだけ時間がかかるか予測が立たないというのが現実です。
統計では、完全失業者の実に3人に1人以上が失業してから1年以上が経過しており、また失業期間が半年以上の方は全体の半数にも達しています。
つまり、「決まるまで半年や1年かかることはザラ」なのです。
(失業者の中には失業手当を最大限受給することを第一とし、就職を急がない方たちも存在しますが)
失業期間が半年ならまだしも、1年を超えてくると、明らかに「長期失業者」のレッテルが貼られ、さらに転職が難しくなってきます。
「何ヶ月か専念すれば転職できるだろう」と考えて安易に退職をしてしまい、気がついたら長期失業者になってしまった、では遅いのです。
避けられないお金の問題
失業が長期化した場合、経済的な問題が生じてきます。
十分な退職金や失業手当がもらえる方は別ですが、自己都合で退職すると、失業手当が受給できるのは3ヶ月後からで、受給期間も長くて5ヶ月、短ければ3ヶ月です。
しかも、受給できる金額は、サラリーマン時代の給与よりもかなり減ります。
その一方で、住宅ローンを抱えている人も少なくないですし、転職活動にだってそれなりにお金もかかります。
ですから、失業期間が1年も経つと、多くの方は生活が逼迫してきます。
そうなると、「転職活動に専念したいから」と退職したのに、当座の生活費稼ぎのためにアルバイトでもせざるを得なくなります。
それも、在職中よりもはるかに安い賃金で。
(中高年の場合は、悲しいことにそのアルバイトの採用すら簡単ではありません…)
追い詰められた先に得られるものは
失業が長引くと、経済的な問題だけでなく、精神的にも追い詰められてきます。
ご近所の目、家族の目。
社会から評価されないことによる自信の喪失。
一日も早く何とかしなければならないという焦り。
そんな時に採用の話があれば、誰でも飛びついてしまいます。
会社を辞める時には考えてもみなかったような低い条件の職でも、受け入れざるを得なくなってしまうのです。
条件が低いだけならまだしも、入ってみたらとんでもないブラック企業で、すぐに辞めざるを得なかった、というのも残念ながらよくある話です。
そうすると、長期ブランク+短期退職で、さらに就職しづらくなる「負のスパイラル」に陥ることになります。
このように、先に退職して転職活動をしようとすると、最悪の場合、お金も、プライドも、キャリアも失ってしまう危険性があるのです。
転職活動は働きながらでもできる
その一方で、在職のまま転職活動を行ったらどうでしょうか。
確かに、フルタイムで働きながらの活動は楽ではありません。
でも、夜にテレビやお酒を我慢して少し時間を取ることはできないでしょうか?
電車通勤ならスマホや携帯で求人探しくらいはできそうです。
平日は難しくても、休日ならまとまった時間を取れますよね?
そんな生活も永遠に続くわけではありません。
本気で2~3ヶ月がんばれば、十分転職できる可能性があります。
正しい方法でやれば。
転職がうまくいかないのは、時間が足りないからではなく、多くはやり方が間違っていることが原因です。
時間があれば転職できるなら、会社を辞めて専念している人はすぐに転職できるはずですが、失業が長期化している人が多いのは上述の通りです。
(逆に、毎日朝から晩まで転職活動しようと思っても、そんなにすることないです)
たとえば、難関資格にチャレンジしている人の中には、働きながら何年も猛勉強を続けている人がたくさんいます。
それに比べれば、転職活動の苦労など、たかが知れていると私は思います。
中には思うように時間が取れなかったりうまくいかなかったりで、転職活動の期間が延びてしまうケースもあるでしょう。
でも、退職されてしまった方と違って、その間もサラリーマンとしての身分も給料も確保されています。
転職活動が長引いたからと言って、転職市場で評価が下がることもありません。
転職の時期が少し先になる。ただそれだけなのです。
それでもあなたは、やはり先に退職することを選びますか??
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