AさんとBさんの転職:二人の命運を分けたもの(その2)
Bさんの動き
一方、Bさんは退職を決意したものの、すぐに会社を辞めることはしませんでした。
手探りで挑んだ前回の転職では決まるまでに半年近くかかっており、この不況下での転職活動では次の職場が見つかるまでどれくらいの期間がかかるのか、予測がつかなかったからです。
業績悪化で給与は減り、人員削減で仕事の量は前よりも格段に増えましたが、それでも働きながら転職活動を並行して行う選択をしたのです。
前回苦戦したのは、引く手あまただったバブル入社の時のイメージがどこかにあり、甘く考えて十分な準備もせずに転職活動に臨んだことが大きな要因でした。
そこで今度の転職活動では、十二分な準備をして臨むつもりでした。とは言え、激務で転職活動に充てられる時間は限られています。
Bさんが下した判断は、「転職のプロに頼る」ことでした。
前回の経験で、自力での転職活動の限界を感じていました。
多少の費用がかかっても、経験豊富なプロに指導を受けた方がはるかに短時間に、そしてはるかに良い結果を出せると考えたのでした。
Bさんはインターネットであらゆる転職支援サービスとその評判を検索し、ここぞというコンサルタントに依頼をしました。それなりの費用がかかりましたが、自分の将来への投資と考えれば安いものです。
そのコンサルタントは支援の最初に入念なヒアリングを行い、Bさんのこれまでについて詳しく把握することに努めました。
その上で、Bさんの課題と対策を鋭く指摘するとともに、自分でも気がつかなかったアピールポイントも見つけてくれたのです。
行き当たりばったりだった前回とは違い、コンサルタントから転職活動の方向性や活動スケジュールが提案され、着実に転職成功に近づけるという確信や安心感を持つことができたのでした。
ヒアリングを踏まえ、何度もミーティングを重ねててブラッシュアップをかけた応募書類は、自分で見ても魅力があふれる出来栄えとなり、自信を持って応募に臨むことができました。
また、求人を最大限見つける方法も教わったことで、心配していた応募先にも事欠きません。
そして応募を開始してから1ヶ月が過ぎる頃には、Bさんは仕事との日程調整が難しくなるほど、企業からの面接の案内が入るようになっていたのでした。
二人の転職活動の結末
Aさんは、いっこうに結果が出ない状況にすっかり自信をなくしていました。最初は大らかだった家族の目も、近ごろは冷たさを感じるようになりました。
そんな中、以前面接に呼ばれたある中小企業から内定の連絡があったのです。
Aさんはその話に飛びつきました。
給料は前職よりもかなり下がってしまうのが難点でしたが、これ以上無職でいるわけにはいきませんし、他に選択肢がありません。
面接に訪れた時の事務所内の暗い雰囲気が少し気になりましたが、気のせいだと思うことにしました。
Aさんは入社の返事をし、翌月からさっそく出社することになりました。ところが、職場に入るやいなや、社長の怒鳴り声が耳に飛び込んできました。
後でわかったことですが、社長は気に入らない社員にはひどい扱いをする大変なワンマン社長でした。
そして、連日のサービス残業はまだしも、給料の額も仕事の中身も、事前に聞いていたのとはかなり違うことがわかりました。
前任者もそれに我慢ができずに、短期間で退職してしまったそうです。
Aさんもこの転職を後悔し、社長とケンカ別れの形でわずか2ヶ月で退職してしまいました。
その結果Aさんには、1年以上のブランクの後に2ヶ月での短期退職という事実が残り、より厳しい転職活動が待ち受けることになったのでした。
一方のBさんはどうかと言うと…
面接に手こずる局面もありましたが、厳しい転職環境の中、Bさんは3社の内定を相次いで獲得することに成功しました。
転職活動を始めてから、まだ2ヶ月余りのことです。
どの会社を選ぶべきか、嬉しい悩みです。
コンサルタントにも相談した結果、Bさんはある精密部品メーカーの営業職を選びました。規模は大きくありませんが、高い技術力を持ち、将来的にも安定した業績が期待できる会社だったからです。
給料は実は今の会社とほとんど同じで、内定をくれた他の会社にはもっと高い給料を提示してくれたところもありましたが、気にはなりませんでした。
この会社なら、入社後にがんばって結果を出せば、昇給・昇進を勝ち取れるという確信があったからです。
それよりも、安心して定年まで頑張れる会社を選べたことに満足しています。
会社に退職を届け出たBさんは、引き継ぎも終え、たまった有給の消化の真っ最中。束の間の休息を楽しみながら、新たな職場での活躍に思いを馳せています。
能力もキャリアもほとんど変わらなかったAさんとBさんを分けたものは、いったい何だったのでしょうか?
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