隣の芝生は青くない:別の業界・職種へのチャレンジの難しさ
別の分野に行きたい人々
転職コンサルを受講される方の中には、今までとまったく違う業界・職種に行きたいという人は少なくありません。
たとえば、
- 毎日ネタ探しや細かい締め切りに追われ続けて、心身ともに疲れきった新聞記者の方。
- 膨大な商品の管理に、早朝から深夜までの接客、そして販売ノルマに嫌気が差したスポーツ店の副店長さん。
- 連日徹夜でシステム開発とバグ潰しに明け暮れる過酷な労働環境で自律神経失調症になったプログラマーさん。
これらはいずれもコンサルを受講された方の実例です。
他にどうしてもやりたい仕事があるわけではないけれど、
「とにかく今の仕事から逃げたい」
という人たちですね。
またその他に、
「○○の仕事の方が面白そう」
「○○の仕事は楽な割に給料が高いそうだ」
といったように、今の仕事を辞めたい強い理由があるわけでもないのに、興味や憧れなどから今までと違う分野への転職を希望される人もいます。
別の分野に採用される確率は?
しかし。
それは一方的な「あなた側の事情や希望」であって、採用側があなたを採りたいかどうかはまったく別の問題です。
採用側は、会社にとって必要であり、会社に貢献してくれる人材だと判断できて初めてあなたを採用します。
その判断の最も信頼性の高い根拠は、過去の実績、それも採用するのと同じ分野における実績です。
それなら再現性が高い、つまり自分の会社に入っても同様な働きをしてくれる可能性が高いと考えられるからです。
当然ながら、あなたが応募をしようとする求人には、その業界や職種での経験が豊富なライバルが数多く応募してきます。
その経験豊富なライバル達を差し置いて、まったく未経験なあなたをわざわざ採用する理由はどこにあるのでしょうか?
その当たり前の事情が理解できていない人が少なくないことに驚かされます。
今までと同じ分野に転職する場合の成功確率を1とすると、
- 隣接する分野に転職する場合の成功確率はその「1/10」
- まったく異なる分野に転職する場合は「1/100」
になってもおかしくないと、私は思っています。
チャレンジの代償
チャンスはゼロではありませんが、仮に転職に成功したとしても、
- 採用が決まるまでに長い期間がかかる か、
- 採用されても条件が低くなる
可能性が高くなることを覚悟する必要があります。
中途採用の本質は「即戦力採用」です。
何らかの事情で欠けてしまったピースを素早く埋めてくれる人を企業は探しています。
もしまったくの未経験でこれから育てる必要があるなら、「若くて元気で」「色が染まっていなくて」「給料が安く済む」新人を採るでしょう。
あなたができるだけ早く転職を決めたい、あるいは好条件で転職したいなら、できるだけこれまでと同じ分野で転職活動されることをお勧めします。
転職すること自体が、すでに過去の財産を手放す活動なのです。
社内でのキャリア、人脈、待遇など…
その上、仕事上の知識や経験や実績を投げ捨てて別の分野に行くのは、あまりにも無謀であり、またもったいないことだと思いませんか?
あなたがその転職で得られるものは、本当にそれらを投げ捨てる価値のあるものでしょうか?
貴重なあなたの財産を大切にしましょう。
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