サラリーマンにとっての残業代
そもそも残業代って
残業代と聞くと、今の私は胸がキュンとします(苦笑)。
なぜなら、独立後は、自分で働く時間帯も長さも自由に決められますが、その代わり深夜まで働こうが週末に仕事を入れようが、労働時間に対してお金を得られるということが一切無くなってしまったからです。
あの頃に戻りたい…とは思いませんが、郷愁を誘う言葉ではあります。
(ついでに言えば、「ボーナス」という言葉にはもっと反応します(笑))
労働基準法は「労働者の保護」を目的として「最低限の労働条件」を定めるもので、その中で労働時間について定められ、それに付随して残業代についても規定されています。
(残業代の基本については、「雇用条件の基礎知識:残業って何?」で紹介していますので、詳しくはそちらをご覧下さい)
要するに、労働が過剰にならないように、また過剰になった場合には金銭で報いるように、
「労働者をそれ以上働かせるなら賃金を上乗せしなさい」
ということです。
ちなみに、2013年の厚生労働省「毎月勤労統計調査」によれば、一般労働者の月間残業時間は15.5時間、残業代は約31,600円となっています。
しかし、法律的には同じでも、会社や人が違えば、残業代というものの位置付けや意味は大きく異なるものです。
あなたにとって残業代とは?
ある人にとっては、残業代というのは「蜃気楼」のようなものです。
「毎日が午前様」のような過酷な労働環境にあり、本来なら多額の残業代を受け取れるはずなのに、表向きは残業していないことにされてしまってその手には入らないのです。
私のコンサルティングの受講者の中にも、「残業代というものを今までもらったことがない」という人もいました。
逆に、ある人にとっては残業代は「確実な副収入」になっています。
毎月の残業代を予め給料の一部として計算に入れていて、本当は残業の必要がなくても仕事のペースを調整して時間外労働を行うのです。
意図的に「きびきび働かない」ことで時間給+割増賃金がもらえるのですから、こんなにオイシイことはありませんね。
もちろん前者は違法ですが、実際には法律通りに残業代が支給されない会社や職場はいくらでもあります。
通常の賃金だけでなく、そこには割増賃金も加わってくるだけに、「本来もらえるはずなのにもらえない人」と「本来もらえないはずなのにもらえる人」の差は非常に大きくなりますね。
それほどに、残業代という存在の意味は人によって違うのです。
企業にとっての残業代
しかし、企業にとっても、残業代の25%以上の割増賃金(深夜だとさらに+25%、休日の深夜なら+35%)の負担は大きいものですし、労働時間だけを基準に機械的に算出されることの是非も昔から議論されています。
私がサラリーマンであった時も、同じような仕事を任されているのに、仕事が効率的で早い人は残業代が得られず、仕事が非効率でノロい人が残業代をもらうことの不合理さをいつも疑問に感じていました。
とはいえ、時間でなく成果で評価することもまた難しいもの。
労働時間を基準に計算することが適当でない仕事については特例規定が設けられていますが、「サービス残業」の温床になるリスクも指摘されています。
企業が「実際にはまともに働いていない人に残業代を払わなければならない」のは不合理ですが、「実際に長時間労働に従事しているのにコストカットのために残業代を払わない」のも許されないことです。
政府は、事務職について労働の成果で賃金を支払い、労働時間に応じた割増賃金を不要とする「残業代ゼロルール」の検討を行なっていると報じられています。
実際の労働に見合った賃金を支払う(受け取る)ためのルールの議論は、これからも続いていくのでしょう。