持ち家か賃貸か-永遠なるテーマ その2
時間の経過によるリスクを考える
自家用車を持つことの想像以上のコストの高さについては、「家1軒分?自家用車を持つことのコスト」でお話しました。
生涯のトータルコストでは家を1軒買うのに匹敵するほどでありながら、自家用車に乗り続けることのリスクがそれほど大きくない理由の1つとしては、
「付き合う期間が短い」
ということがあると考えます。
たとえ自家用車に30年、50年と乗り続けたとしても、その間には何台も車を乗り換えます。
同じ車との付き合いは、長くても10数年、短ければ1年未満で手放すこともあるでしょう。
車は、その時の経済状況や家族構成、使用目的などにフィットしたものに簡単に乗り換えることができます。
購入も売却も簡単な、この車のような性質を、経済用語では「流動性が高い」と言います。
しかし、家は違います。
高価な買い物であるだけでなく、一度手に入れたら、一般的には数十年間の長い付き合いになります。
その間には様々な状況の変化が起こりますが、車のように手軽に対応することはできません。
(賃貸ならいつでも好きなところに引っ越せますが…)
だからこそ持ち家には大きなリスクがあるのです。
家との長い付き合いの間の、収入の減少や天災のリスクについては、すでに「持ち家か賃貸か-永遠なるテーマ」でお話しました。
ここでは、それ以外のリスクを見てみましょう。
長期保有のコストがかかる
持ち家を無借金で購入できるだけの現預金のある方は、ごく一握りでしょう。
普通は30年、35年といった長期ローンを組んで家を購入しますが、その場合に購入代金以外にかかってくるのが、ローン金利ですね。
現在は超のつく低金利の時代であり、数少ない現代のメリットと言えます。
それでも、たとえば2%の固定金利で3,000万円のローンを組んだら、その利息は30年で1,000万円近くにもなります。
変動金利なら1%未満で借り入れることができますが、極めて低い金利だけに、将来的には3%、4%と金利が上がるリスクがあります。
家にかかるお金はローンの支払いだけではありません。
30年もの付き合いの間には、大きなリフォームが必ず一度や二度は必要になります。
お風呂やトイレなどの水回り、外壁や屋根など…
トータルでは、やはり1,000万円レベルのリフォーム代を覚悟しておく必要があるでしょう。
その他にも、持ち家なら家と土地に対して固定資産税もかかってきますね。
自分がお金を出して手に入れた財産なのに、どうして税金を払い続けないといけないのか理解に苦しみますが、30年の間には数百万円単位の税額にはなるはずです。
これらは家を保有している限り生じるコストであり、いずれも賃貸なら不要なお金です。
合計すると、もしかしたらもう1軒家が買えるくらいの金額になりませんか?
そのコストをあなたはちゃんと見越していますか?
人生の変動リスク
30年ものローン期間の最初と最後では、あなたの経済環境も、家族構成も、考え方も、体力も、何もかもが大きく変わっているはずです。
たとえば、教育環境を考えて、まだ子供が小さなうちに家を建てたとします。
でも、その子供も10年も経てばその家に住まなくなるかもしれないのです。
若くして無理に家を建てたがために、不便な場所だったり、窮屈な間取りになってしまうかもしれません。
年を取ったら3階に上がるなんてツライですし、便利なマンションに住みたくなるかもしれません。
あるいは、都会の喧騒を離れて田舎暮らしがしたくなるかもしれません。
それでも、ローンが残っている限りは、自分に合わなくなった家のために延々とお金を払い続けていかなければならないのです。
また、小さい時はそれほどお金がかからない子供も、大きくなるにつれてどんどん教育費や食費に衣服費などの支出がかさむようになります。
内閣府の『インターネットによる子育て費用に関する調査報告書』(2010)によれば、子供1人が中学を卒業するまでにかかる子育て費用は全国平均で「1,860万円」になるとしています。
大学まで行かせた場合は、合計費用は1人あたり3,000万円にも達します。
子供1人でこの金額ですから、2人、3人といる場合は…
それでも住宅ローンの支払いや生活設計は本当に問題ないでしょうか?
時間を敵に回さない
以上、持ち家のリスクについて私なりの考えをお話してきました。
高額で、流動性が低くて、長く付き合うものだからこそリスクも大きくなるということです。
だとすれば、
「付き合う時間を短くすればそれだけリスクは抑えられる」
ことになりますね。
若くて余裕のない時に無理をして購入せずに、もう少し年を取ってからじっくりではダメでしょうか?
子供にお金がかからなくなり、経済的に余裕ができてから、自分が本当に欲しい家を手に入れてはどうでしょうか?
借入期間が短くなれば、ローン金利は大幅に減ります。
保有期間が短くなった分、固定資産税もリフォーム費用も抑えられます。
もちろん、多少のことが起きてもびくともしない、リスクを負えるだけの余裕がある人は、早くから購入しても構いません。
要するに、自分が負えるだけのリスクに見合った付き合い・買い方をすべきだというのが、私の考えです。
リスクとうまく付き合って、余裕ある生活を楽しんで下さい。