消費税率アップで損をしないための消費行動
消費税増税時の駆け込み需要
この原稿を書いている時点では、消費税は8%で据え置かれ、10%への増税は先送りとなっています。
しかし、いずれ増税は行われるでしょうし、10%が最後ではなく、将来にはさらなる増税が待っていることでしょう。
これまで3%から5%、5%から8%と増税が行われてきましたが、その直前には必ず増税前の駆け込み需要が発生してきました。
今度10%になる時にも同じ状況が起こるでしょう。
しかし、私はいつも不思議に思います。
「増税前に駆け込むメリットって何?」
たしかに消費税が10%になる前に消費財を購入すれば、8%との差の2%分だけ税金は安く済みます。
でも、消費税の計算の元になる商品・サービスの価格は一定ではありません。
価格は需要が多い時には上がり、需要が少ない時には下がります。
増税直前には我先にと購入希望者が押し寄せますから、価格は上昇あるいは高止まりしてしまいます。
それでは、2%ばかり消費税が安く済んでもかえって高くつくことが多いはずです。
逆に増税後には、駆け込み需要の反動で消費は一時的に大きく落ち込みますから、価格も大きく下がることになります。
であれば、増税分を加えても増税後の方がトータルでは安くなる可能性は十分にあります。
上の図は、2014年春の5%→8%の消費税増税前後のあるテレビの価格変化を「価格コム」から引用したものです。
増税前に駆け込み需要による価格の明らかな上昇が見られ、販売平均価格で約36,000円値上がりしています。
しかし、増税前後からすぐに値下がりが始まり、あとは下落の一方です。ちなみに、増税直前の価格ピーク時(2/24)と増税の約1ヶ月後(4/28)の税込価格を比較してみると、
【2/24】 価格 340,091円(税込)
【4/28】 価格 297,825円(税込)
と、増税後にも関わらず、税込の支払額は大きく下がっていることがわかります。
「それは商品のライフサイクルが短くてすぐに価格が下がる家電だから」
という意見もあるかもしれません。
しかし、これは家のような耐久消費財でも同じことです。
たとえば、3,000万円の家を建てる場合、消費税が3%上がれば90万円ものコストアップになりますから、増税前に建てたくなる気持ちはわかります。
ハウスメーカーや工務店も、この「特需」にありつくために増税前後のコスト差をここぞとばかりに喧伝します。
しかし、買う気マンマンの顧客がたくさん押し寄せ、その一方で建築工事が集中すると人手不足などで建築コストは上がるために、値下げ方向にはベクトルはなかなか向きません。
逆に、増税の反動で需要が落ち込むと、ハウスメーカーや工務店は今度は数少ない顧客を取り合うことになります。
建築コストの高騰も治まっており、増税分(あるいはそれ以上)を値引いてでも何とか受注を増やそうとするため、結果として増税前と比べてもけっして割高にはならなくなるのです。
さらには、建築工事の数が減る分、工事も丁寧にしてもらえるかもしれません。
同じことは自動車などの購入にも当てはまります。
結局、税率の変化そのもの以上に、需要の変化による商品・サービスの価格変化の方が大きいことが多いので、焦って増税前に飛びつく必要はない、というのが私の考えです。
本当に必要なものなら、なおさらじっくり慎重に手に入れたいものです。