社会保険料という名の重税
もう1つの税金
あなたは給与明細を見て、「なんでこんなに天引きされるのかなぁ」と溜息をつかれたことはありませんか?
私もサラリーマン時代は不満たらたらでしたが、「税金を納めるのは国民の義務だからしゃーないか」と諦める他ありませんでした。
でもでも、給与明細をよく見れば、引かれているのは所得税や住民税といった「税金」だけではありません。
上図はインターネット上に公開されていた給与明細サンプルを拝借したものですが、「控除内訳」の中には税金以外のものがたくさんありますよね。
「厚生年金」や「健康保険」が代表的なものですが、これらは「社会保険」と呼ばれるもので、公的な保険・年金のために徴収されるものです。
(社会保険には、その他に「介護保険料」「雇用保険料」などもありますが、ここでは影響の大きい厚生年金と健康保険についてのみ触れます)
名前は「保険」ですけど、給料から差っ引かれるという意味では税金と変わりませんし、その金額は税金よりもよっぽど高いですよね。
ここでは、この「もう1つの税金」とも言うべきこの社会保険について、少し考察してみたいと思います。
税率と保険料率の比較
社会保険の前に、文字通りの「税金」である所得税からお話すると、こちらの特徴は「累進課税」、つまり所得が増えるほど税率が上がる仕組みになっていることです。
この原稿を書いている時点では、5%~40%までの6段階になっています。
(住民税については、課税所得に対して10%の固定税率になっているので異なります)
次に社会保険について見てみると、税金との大きな違いは、原則として「会社と折半」するということです。下記の社会保険料率はあくまでも会社負担分との合算になります。
厚生年金の保険料率は現在は17%台で、毎年小刻みに上がり、2017年以降は18.3%に固定されることになっています。
次に健康保険ですが、会社が加入する健保によってかなり異なりますので一概には言えませんが、中小企業が加入する「協会けんぽ」ではおよそ10%弱となります。
(ちなみに言いますと、サラリーマンを辞めて市町村が運営する国民健康保険に加入した際に徴収されるのは「国民健康保険税」であり、こちらは「税金」に分類されます)
したがって、厚生年金と健康保険を合わせると、自己負担はおよそ14%くらいということになります(健康保険が協会けんぽでない方を除く)。
社会保険の本当の重さ
上記の約14%という数字だけを見れば、最大40%にもなる所得税などと比べると、あまり大したことがないような気もしてきます。
でも、そこには留意すべき点がいくつかあります。
まず、上記の「率をかける対象」となるお金が異なることです。
所得税や住民税は、様々な非課税枠を控除して残った「課税所得」がベースになります。細かい計算は省きますが、年収500万円程度の方なら、課税所得は年収の半分以下になりますし、その場合に課される所得税は10%です。
一方、厚生年金や健康保険は「標準報酬月額」といって、ほぼ支給額そのものがベースになりますから、見かけの率よりはるかに大きな金額になるということです。
もう1つ留意すべきことは、社会保険には所得税の「累進課税」のような仕組みはなく、料率は給料の額に関わらず固定だということです。
たとえば、課税所得が180万円の人の所得税率は5%ですが、課税所得がその10倍の1,800万を超えると、所得税率は8倍の40%に増えます。
ところが、社会保険については、課税報酬が10倍になろうと20倍になろうと、保険料率は一定で変わらないのです。
つまり、年収が多くなるほど保険料の負担感は減るということになります。
このことは消費税でよく話題に上がる「逆累進性」と同じであり、収入が低い人ほど厳しい仕組みと言えます。
社会保険や税金についてはいろいろ考えるべきテーマがありますが、複雑になりますので今回はここまでにしたいと思います。