非正社員から正社員への転職
正社員への転職の希望と現実
「正規雇用と非正規雇用の待遇格差」で、両者の違いを見ました。
待遇面については、両者の違いは顕著です。調査の種類によってバラつきはありますが、職業人生を一方の雇用形態のみで全うした場合、ざっくり言って生涯年収は2倍ほども違うのです。
その格差は、男女間に存在する収入格差をはるかに超えており、社会生活を営む上でも様々な影響(たとえば結婚など)をもたらすことが考えられます。
私のところにも、
「これまで非正規社員として働いてきたが、正社員になることは可能か」
という内容の相談はかなり寄せられます。
そこには待遇の問題だけでなく、
「もっと責任のある仕事がしたい」「高いレベルで会社に貢献したい」
という、仕事そのものに対する欲求も根強くあります。
しかし、そうした非正規雇用→正規雇用への転職希望とは裏腹に、この20年で非正規雇用者が占める割合は2倍近くなり、雇用市場全体が明らかに「正規雇用から非正規雇用へシフト」する動きを見せています。
非正規雇用を増やすことで固定コストの削減を目指す企業の動きは、上記の希望に対して明らかに逆風となっているのです。
「正社員への転職は可能か」という質問に対しては、私も「けっして簡単ではありません」と言わざるを得ません。
正社員への転職を実現するための条件とは
これまで正社員として働いていた経験がなく、なおかつ、非正規社員としても平均的な仕事ぶりに過ぎなかったのであれば、そこから正社員として採用されることはかなり困難でしょう。
なぜなら、正社員に求められる業務水準をクリアできるという証拠を示すことが難しいからです。
中途採用という局面で最も重要な要素は、
「求められる仕事をこなすことができるだけの経験やスキルを持っているか」
ということです。
成功の難易度が高い転職としては、非正規雇用→正規雇用以外にも、たとえば、
- 長期失業者の転職
- 中高年の転職
- 独立経験者からの転職
などがあります。
これらもかなりの難易度がありますが、しかし、多くの方は過去に正社員として活躍していたり、あるいは経営者として高いレベルで仕事をしていた経験を持っています。
そのため、懸念されるネガティブな要素はあっても、最も肝心なその業務経験やスキルを評価して、正社員として採用してもらえる可能性は必ずあります。
しかし、正社員としての経験も、それに匹敵するような業務経験も持たなければ、正社員経験のある応募者であふれかえっている中から、あえて未経験者を採用する理由が見つかりにくいでしょう。
そう、正社員への転職を実現するには、まさにこの「あえて未経験者を採用する理由」を与えなければならないのです。
こんなふうに言うと、正社員への転職は絶望的かのように思われますね。
しかし実際には、これまで成功をお手伝いした経験はいくつもあります。
成功のための必須条件は、やはり「正社員として十分やっていける証拠」を示せることです。
たとえば、仕事ぶりを高く評価されて非正社員のリーダー的なポジションを任されていたり、実質的に正社員と同等(あるいはそれ以上)の仕事を任されこなしていた実績があることなどです。
社内で「○○さんは正社員以上に働くね」「○○さんに任せておけば安心だ」「○○さんなら正社員になっても務まるよ」と言われるくらいの仕事ぶりであれば、アピール材料は確実にあります。
単に「非正社員はいやだから正社員になりたい」ではなく、正社員として十分務まるだけの仕事ぶりを実績として示しておくことが何より大切です。
「資格を取る」ということも能力・スキルを示す材料の1つにはなるので、無いよりもあった方が良いですが、業務実績に勝るものはないことも付記しておきます。