希少性が価値を生む:キャリアの一貫性の例外とは
コンサル受講者Sさんの苦戦
「転職回数は少ないほど良い?:評価されるキャリアの原則とは」で、転職回数は少ないに越したことはないが、それよりもキャリアの一貫性の方が重要だというお話をしました。
しかし、時には例外もあり得るということを、実例を交えて紹介しましょう。
以前私のコンサルティングを受講された30代男性のSさんは、転職がうまくいかなくて悩んでいました。
実はSさんには、特異なキャリアという問題があったのです。
Sさんは大学卒業後、ある大手企業の子会社でプログラマーとして数年間勤務しました。
親会社がメイン顧客であるがゆえに、業績は安定していましたが、Sさんの仕事はかなり定型的であり、同じような業務が続く毎日に将来性を感じられませんでした。
そんな中、Sさんは仕事を通じて公認会計士と知り合う機会があり、近い年齢でありながら1人のプロフェッショナルとして活躍しているその姿に感銘を受けました。
いつしかその資格を取って会計のプロとしてやっていくことが目標となり、資格取得のために会社を退職。
しかし、最難関資格の1つである公認会計士の壁は高く、残念ながら2年の受験勉強の後に取得を断念したのでした。
失意のSさんは、親戚の経営する貿易会社で働き始めました。
そこでSさんは貿易実務を学びながら、中国やヨーロッパに長期間語学留学し、語学を身につけます。
しかし、その会社も業績不振で退職せざるを得なくなり、再度の転職が必要となったのです。
そうして私のコンサルティングを受けるに至ったのですが、客観的に見てSさんのキャリアは、
プログラマーとしても貿易職としても中途半端
公認会計士受験にも失敗
という、かなり難しいものでした。
転職活動は苦戦が予想され、実際支援開始後もなかなか満足できる結果を出すことができませんでした。
特異性が強力な差別化となる時
ところが、Sさんの転職活動は予想外の結末を迎えます。
ある国際的な企業が、「中国法人における会計システムの開発担当者」を募集していたのです。
つまり、この求人においては、
プログラマーとしての経験
公認会計士受験による会計知識
中国語および英語の語学力
を併せ持つSさんの経歴は、まさに理想的なものでした。
プログラミングのスキルも、会計知識も、中国語・英語の語学力も、それぞれに限ればSさんよりも優れた人はいくらでもいたでしょう。
しかし、Sさん以上にそれらを兼ね備えている人は他にいなかったので、早期に内定を獲得し、しかも予想以上の好条件で採用されたのでした。
Sさんのように大きなキャリアチェンジを伴う特異なキャリアは、一般的には受け入れがたいものであることは確かです。
しかし、特異であるだけに、ひとたび条件がマッチする求人に出会うことができれば、ライバルの存在しない絶対の存在にもなり得るということです。
「転職活動の成功は差別化がカギ」
と私は常々言っていますが、Sさんの場合はその特異なキャリアこそが最大の差別化要素となったわけですね。
もちろん、これはあくまでも例外的なケースであり、誰にでも当てはまる話ではありません。
しかし、同様に難しいキャリアとなっている人にとっては、可能性を広げるヒントとなるかもしれません。