最初のキャリア選択がすべてを決める?
キャリアの違いを生む要因とは
転職コンサルティングをしていると、数多くの方のキャリアに触れることになります。
2人として同じキャリアの人はいないわけで、本当に人それぞれに様々なドラマがあり、ヒアリングをする度に「人生いろいろ」を実感しています。
当たり前ですが、極めて順調なキャリアを歩んでいる人もいれば、同情を禁じ得ないほど大変なキャリアを歩んでいる人もいます。
学歴を物差しに人を判断するのは古い感覚でしょうが、それほど高いレベルの学歴でなくても大手企業で非常に活躍されている人もいれば、「どうしてそんなことに」と思うような高学歴の方もいるのです。
優れた実績を積み、高い評価を得られるキャリアを築けるかどうかということは、様々な要素が絡むことであり、その理由や差別化要因が何であるかは一概に言えることではありません。
ただ、転職コンサルティングを行なう中で、順調にキャリアを積めていない人を見てしばしば感じることがあります。それは、
「この人は最初に入るところを間違っちゃったのかな」
ということです。
最初の職業選択が悪いと…
典型的な例の1つは、新卒入社後からいろいろな業界・会社を転々としてしまい、転職の度にキャリア評価を下げ、待遇も低空飛行している人です。
働き始めてすぐに違和感を感じたり他の仕事に興味を持ってすぐに退職したものの、次の職場でも同じことを繰り返し、結局やりたいことや適性が見極められずに転職市場をさまようケースです。
また、1社一筋で仕事に励んできても、たとえば業界そのものが斜陽になってしまい、その後のキャリア形成に苦しむようなケースもあります。
たとえば、かつては隆盛を誇った鉄鋼業が低迷して「鉄冷え」になった歴史があります。
私が学生の頃は、新聞記者というのは花形の職業の1つでしたが、インターネットの普及によって新聞業界はかつての勢いを失いつつあります。
いずれのケースも、新卒時の「最初の選択」が違っていれば、その後のキャリア形成は(良い意味で)別物になった可能性があったでしょう。
かくいう私も、「最初の就職が違っていれば今頃は…」と夢想することもある人間の1人です。
もちろん最初の選択がすべてではありませんが、新卒時の選択肢の幅広さに比べれば、ひとたび就職した後のキャリアの選択肢や方向性ははるかに狭まっていくことは事実です。
最初の職歴というのは、どうしてもその後のキャリアに影響を与え、人はそれを引きずるからです。
だからこそ、できる限り最初の選択には慎重を期す必要がありますが、それを最も社会経験が乏しい学生時代に行わなければならないから難しいのです。
多くの人は、偏った情報や漠然としたイメージを頼りに、生涯でも極めて重要な決断をしてしまいます。
私が就職する時も、親にすら相談せずにすべて自分1人で決めてしまいましたが、その時に頼れる人がいて、私に聞く耳があれば、きっと違う選択もあり得たことでしょう。
インターネットが普及した現在では、昔に比べて情報は格段に手に入るようになりましたが、それでもたくさんの情報を分析し、最終的により良い選択を行うためには、やはり十分な知識や経験が必要なのです。
私が現在行なっているのは、社会人経験者に対する転職・再就職コンサルティングです。
そこでは当然ながら、
「今からの方向転換はかなり難しいですよ」
「これまで身につけたスキルを活かされた方が良いのでは」
「もっと早ければ状況は違っていたでしょうが…」
のように、転職の方向性についてはこれまでのキャリアを踏まえたアドバイスにならざるを得ません。
そのため時々、「最初の選択」のお手伝いもしてみたいなと、ふと思うことがあります。